心理カウンセリング視点で描く!共感が生まれるキャラクター対話術

カウンセリング理論

キャラの心を動かす「来談者中心療法」|心理学視点で創る人間ドラマの設計術

カテゴリー:シナリオ設計|タグ:心理学, カウンセリング, ロジャーズ, キャラクター設計, 対話形式, 共感

物語に“人の心”を宿す方法

読者や視聴者の心を揺さぶるシナリオには、必ずといっていいほど「心の葛藤」と「感情の変化」が描かれています。
その核心にあるのが「キャラクターの内面の動き」。
では、どうすればキャラの心を“リアルに”動かせるのか?
ヒントになるのが、心理カウンセリングの理論と実践です。

来談者中心療法とは?

心理学者カール・ロジャーズが提唱した「来談者中心療法」は、カウンセリングの代表的なアプローチのひとつです。
特徴は、助言や指導ではなく、「その人自身の力」を引き出すこと。
カウンセラーは「共感・受容・自己一致」の態度で相手の話を傾聴し、クライエント(相談者)が自分の感情や価値観に気づくのを静かに支えます。

  • アドバイスはしない
  • 感情の言語化を手伝う
  • 気づきによる自発的な変化を促す

このスタンスは、物語における「人間関係の描写」や「感情の深化」に応用できます。

対話シナリオ:悩める大学生とカウンセラー

クライエント:坂本あゆみ(22歳・女性・大学4年生)
相談内容: 就職活動の不安と、親の期待に応えられない自己否定感

カウンセラー(C):こんにちは、坂本さん。今日はお越しいただきありがとうございます。ここでは、あゆみさんの感じていることや思っていることを、そのままお話しいただいて大丈夫です。無理に整理しようとしなくて大丈夫ですからね。

あゆみ(CL):……はい、あの……何を話したらいいのか、正直わからなくて……。

C:わからない、というその気持ちも大切ですね。今、少し戸惑っている感じでしょうか。

CL:……うん、そうです。最近、就活のこととか、親の期待とか、いろいろ考えすぎてしまって……。正直、もうどうしていいかわからないんです。

C:いろいろなことが重なって、考えすぎて、混乱している……そんな感覚なんですね。

CL:はい。就活もうまくいかなくて……エントリーした会社は全部落ちてて……親には「早く決めなさい」って言われるし、自分がダメな人間なんじゃないかって思ってしまって。

C:ご両親の言葉にプレッシャーを感じて、「ダメな人間だ」と感じてしまっているんですね。

CL:……そうなんです。たぶん、私はずっと「いい子」でいようとしてきたから、今みたいにうまくいかないと、自分が全部悪いような気がしてしまって……。

C:「いい子でいなければいけない」っていう思いが、ずっとあったんですね。
その思いがあるからこそ、今の自分を責めてしまうのかもしれませんね。

CL:……はい。頭ではわかってるんです。失敗するのは当たり前だって。でも、気づくと、「こんなんじゃ親に申し訳ない」って自分を責めてて。

C:理屈では理解してるけど、感情がついてこない。それだけ、親の期待が大きくて、それに応えたい気持ちが強いんですね。

CL:……はい。期待されると、期待に応えなきゃって思っちゃうんです。
でも、本当は……もうちょっと自分のペースで考えたい。ゆっくり考えていいって言ってほしいんです。

C:「自分のペースで考えたい」……それが、あゆみさんの本音なんですね。
今のあゆみさんは、「こうしなきゃ」に押しつぶされそうになりながら、本当は少し立ち止まって、自分の気持ちを見つめたいと思っている……。

CL:……うん……そう、かもしれません。誰かにそう言ってもらえるのを、ずっと待ってた気がします。

C:ここでは、いつでも立ち止まって大丈夫です。あゆみさんがどんなふうに感じていても、それを一緒に受け止めていきたいと思っています。

CL:……ありがとうございます。なんだか、少しだけ……気持ちが軽くなった気がします。

創作に活かすためのヒント

  • キャラの感情を丁寧に描写したいなら、まず「そのキャラが何に気づいていないか」に注目する
  • 対話シーンでは、「アドバイス」より「共感」を優先する台詞のほうがリアルに響く
  • キャラが“自分で選ぶ”展開は、読者の心に強く残る

心理カウンセリングの視点を活かした物語設計、今後もシリーズでお届け予定です。次回は「認知行動療法」でのキャラ構築例もご紹介します。お楽しみに!

コメント

タイトルとURLをコピーしました